野鳥の会「鳴き声ノート」でオノマトペ感覚を養う。


紅白歌合戦の票数カウントでおなじみ、日本野鳥の会が「鳴き声ノート」というものを無料送付していたので、申し込んでみました。

日本野鳥の会 : 鳴き声ノート

「鳴き声ノート」は文庫サイズで約20ページ程の小冊子。フルカラーで12種類の野鳥のイラストと手描きのかわいい鳴き声が描かれています。

 

野鳥に全く興味の無い私。

父親が車を運転すると必ず鳥の鳴き声のCDかエンヤのアルバムを流すので、どちらかというと鳥の鳴き声は苦手でした。

心が狭いかもしれませんが、排気ガスをまき散らしながら首都高を飛ばして

「このCD、まるで森の中にいるみたいだろう?マイナスイオンってやつだぞ」

とドヤ顔で語る父が嫌でしょうがなかったのです。

 

そんな私がなぜ「鳴き声ノート」に興味を持ったかというと、

ノートに記されているオノマトペ(擬声語)の描かれ方が実に豊かだったからです。 

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ピッポグィ~ ピッポグィ~

まるで歌いだすような、ひとつひとつ手書きのオノマトペを見ているとそれだけで気持ちがワクワクしてきます。

 

 

「鳴き声ノート」を見て思い出したのは、1990年代のコメディドラマ「やっぱり猫が好き」。

オノマトペをテーマにした回がありました。

その名も「プップッピ プップッピ プッピー プッピー」。

 

やっぱり猫が好き(17) [DVD]

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小林聡美がある曲の名前を思い出せず

「プッピプッピ」と節をつけて歌いだすのですが、誰もプピプピじゃ分からない。

その混乱に乗じて室井滋は「ほにゃら」、もたいまさこは「てんつく」という自分の耳に合うオノマトペを使ってプピプピと同じメロディを歌い始めて

事態はどんどんカオスになる、というお話しです。

 

どうでもいいけどこの「プップッピ プップッピ プッピー プッピー」というタイトル、私は大好きで何回も繰り返し観たので間違えない自信があったのですが

さっき久しぶりに書いたら「ププッピ プッピ プッピープッピー」と微妙に間違えていました。

Amazonで唯一カスタマーレビューを書いている方も「プップッピプップッピ プッピー」と間違えていらっしゃる。

リズムというのは難しいものですね。

 

 

話を戻して、そんなわけでそんなことを思い出しながら「鳴き声ノート」を眺めていると、ある着想が浮かびました。

 

「鳴き声ノート」を見ずに鳴き声を聴いて、自分なりに感じ取ったオノマトペを書き起こす。

そしてそれを「鳴き声ノート」で答え合わせをしたら面白いんじゃないか?

 

 

早速やってみました。

「鳴き声ノート」はとても親切で、冊子についているバーコードをスマホから読み取ると自動で鳥別の音声YouTubeに飛んでくれます。

 


「鳴き声ノート」 身近な野鳥のコーラス (2ページ) – YouTube

 

さえずり(雄の求愛)も含めて全14種類の鳴き声をじーっと聴いていると

日本語におけるひらがな50音という音の分類がいかに大雑把であるかということ、

そして大雑把であるがゆえにとても便利であるということが解ります。

 

ふつう鳥の鳴き声のオノマトペというと使われるのは主に「チ」「ピ」「ホ」プラス拗音です。

たまにアクセントで「カ行」や「ラ行」が使われるくらいでしょうか。

(ex.ホーホケキョ・クルックーなど)

 

実際に鳥の声を「自分の耳で聴こえた音」に50音で変換しようとすると、「チ」「ピ」「ホ」くらいしか思いつきません。

自分のオノマトペ音感の乏しさにがっくりします。

 

鳥の鳴き声。

音質の違いは微妙で、50音ではその繊細な差異を表現しきれなません。

しかし一方で声のリズムは多様です。

なので、「チ」「ピ」「ホ」の3字を使い分けた上でリズムを正しく模写できれば、鳥の鳴き声を識別するには充分事足ります。

 

しかし私が「鳴き声ノート」でやりたかったのはそれ(だけ)じゃない。

自分だけの持つ独自のオノマトペ音感を追求したいのです。

 

なんとか「チ」「ピ」「ホ」だけに頼らず鳴き声の音質を聞き分けようと、耳を澄ましてみました。

すると不思議なもので、今度は逆に50音だけでは表現したい音が足りなくなってきます。

 

例えば「フォ」。

「フォ」の中にも微細に震える響きがあった場合、「フォ」という表記ではアッサリしてしまいます。

だからと言って濁点を付けてしまうとくどくなりすぎてしまう。

「フォルルルル」という表現が音質的には一番近いのですが、鳥たちは「フォ」と「ル」を一音で鳴いています。だから「フォル」だと二音になってしまいこれまた不正確なのです。

「ル」の小文字があると最高なのですが・・・・

 

こんな風にああでもない・こうでもないと細かく考えて行くと、

結局オノマトペは思いつきの瞬発力が大事だということに気が付いてきます。

 

一聴してみてパッと思い付いたオノマトペを急いで書き留める。

二回目に聴き直してみて、「あれ、全然実際の音とオノマトペが違う・・・・」と思っても気にしない。

たった50音で鳥の多彩な鳴き声を正確に表現しようというのがどだい無理な話なのです。

 

聞きなしに挑戦

 

「聞きなし」という言葉をご存じでしょうか。

私は今回初めて知りました。

鳥の鳴き声を人間の言葉に言い直して覚えやすくしたものです。

たとえばホトトギスは「特許許可局」や「テッペンカケタカ」という聞きなしで有名だそうです。

空耳アワーと同じノリですね。

 

聞きなしの面白いところは、一旦知ってしまうとそうとしか聞こえなくなってしまうところです。

例えばホトトギス、私は

トッポッペッキッパキョッ!」と聴こえたのですが

「テッペンカケタカ」という聞きなしを知ってしまうともういくらホトトギスの声を聴いても

「テッペン・カ・ケ・タ・カ!」としか聴こえなくなってしまいます。

オノマトペというのはそれだけ人の感覚を容易く支配できる威力を持った言葉なんだと思いました。

 

下の表は、私がYouTubeの音声を聴いて感じたオノマトペと、「鳴き声ノート」に書かれていたオノマトペを較べてみたものです。

いいセン行ってるのもあれば、同じ鳥を表しているとは思えないものまで色々あることが分かります。

 

私の考えたオノマトペ 野鳥の会のオノマトペ
メジロ(ジナキ) ティイーッ チーーー
ウグイス(サエズリ) トーーペキョッ チトトチトトト キッテョッキッチテョッキッ ホーホケキョ
ウグイス(ジナキ)  ヂッヂッヂッ チャッチャッチャッ
ヒヨドリ  ウッヒーチヨッ ティヨリッティヨリッヒー ピーヨ ピーヨ ピーピーピー 
ムクドリ  ティリリリリ キュルルルルル 
キジバト  フォープロットトー デーデーッ ポッポー 
キビタキ  トルリティット トルリティット ピッピポィーピッ ピッピポィーピッ 
コマドリ  ヒチョチョチョチョチョォ ヒンカラララララ 
ホトトギス  トッポッペッキッパキョッ キョッキョ キョキョキョキョ 
コジュケイ  ティットロリィ ティットロルリィ ティットロルティィ ピッポグィー ピッポグィー 
モズ  クウィークウィーー キョキョキョキョキョ チョッ チョッ キィー キィキィキィ キュンキュン
トラツグミ  リイィーー トウォーー  フィーーー

 

 私のオノマトペは全体的になんというか・・小うるさいですね。笑

性格がよく表れています。

 

この実験をして以来、今まで通り過ぎていた鳥の鳴き声に思いを馳せるようになりました。

といってもスズメの声しかほとんど聴こえてきませんが・・。

 

今まで見えなかったものが見える楽しさ、

区別のなかったものが区別される世界の広がり、

脳のニューロン?シナプスが繋がる感覚。

そういったものを味わえる楽しい実験でした。

オノマトペ感覚、鍛えられたかな・・・・?

皆さんも時間があったら鳥の声でオノマトペ訓練、してみて下さい。


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