℃-uteが解散日に叶えたSSAという夢。そして夢のその先。


℃-uteが解散しました。
解散して1週間経った今もまだ℃-uteのいないこの世界に上手くなじめずにいますが、メンバーは既にインスタや個人ブログを始めており、それを見て自分も前に進まないといけないと感じさせられたので、けじめをつけるという個人的な意味も含めてこのブログを書かせてもらいます。

12年間走り続けてきた℃-uteの集大成であり夢の到達点となったさいたまスーパーアリーナコンサートが6月12日に行われました。
全セトリの細かいレポはプロの方々が既に書かれていらっしゃるので

℃-ute 涙と笑顔と愛に溢れた4385日“ありがとう!”―――アイドルシーン全体の分岐点となった夜 100%レポート公開 | Daily News | Billboard JAPAN

五戸美樹の「生まれ変わったら鈴木愛理さんになりたい」―℃-uteラストコンサート― | HUSTLE PRESS OFFICIAL WEB SITE

私はひたすらヲタ視点で、感じ入った部分を中心につらつらと書いていきます。

 

 

「野暮は言いっこなし」
-自立に踏み出す℃-uteたちの第一歩となったSSA

SSA会場には約2万人の観客が集まりましたが、当日の会場で目立ったのは女性客の多さ。
私が℃-uteのコンサートに行き始めた2008年当時は周りを見回すと男性客ばかりで汗臭い熱気に包まれていました。

それが今や若くてオシャレな女の子が右にも左にもいっぱい。10年前はお手洗いの心配など全くする必要がありませんでしたが(常にガラガラだから)、今はすぐ行列になってしまうほどの女性率の高さになりました。

思えば2009年に卒業した梅田えりかちゃんは当時から大人の女性の魅力を放っており、女性ファンの増加を願っていました。マニッシュなスーツ姿で踊る「FOREVER LOVE」は女性ファン増加を明らかに意識した曲で、イベントも女性限定公演といった試みを実施。会場に詰めかける女の子たちを見て一番喜んでいたのは彼女だったように思います。


℃-ute 『FOREVER LOVE』 (Black Dance Ver.)

矢島舞美ちゃんはSSAのラストMCで「抜けた3人は℃-uteにとって必要な存在で、(抜けたことによって)私たちを強くしてくれた」と言っていましたが、その最たる結果が女性ファンの増加だったのでは、と感じました。

女の子が憧れる女の子。
可愛いだけじゃなくてかっこいい女の子。
「野暮は言いっこなし 水差さないで」(The curtain rises)と歌いながら壁を盛大に壊すオープニングから演出される、強い女性像。
あの「大きな愛をもてなして」を歌っていたあどけない女の子たちが、そんな逞しい存在になるなんて(しかも「大愛もて」もバリバリ現役で歌えるなんて)!

12年の歳月が生んだものというのは本当に凄いです。


℃-ute 『大きな愛でもてなして』 (MV)


℃-ute『The Curtain Rises』(℃-ute[The Curtain Rises])(Promotion Edit)

 

 「完璧じゃないからこそ色褪せない」
-どこまでも℃-uteらしさを貫くリーダー・矢島舞美の佇まい

可愛いしかっこいい。歌もダンスもルックスもアイドル界の最高水準。
そんな完璧のように見える彼女たちの強い部分と脆い部分の二面性を描いたのが、後期℃-uteの定番曲となる「アイアンハート」です。


℃-ute『アイアンハート』(℃-ute[Iron Heart]) (Promotion Edit)

 この映像にもありますが(3分3秒~)、
「気付けば背に背負うバッグも重くて♪」の所で中央の矢島舞美ちゃんは隣りの中島早貴ちゃんにエアかばんを背負わせ、歌詞の世界をおちゃめに表現します。

ここは毎回ライブの見どころの一つ。
今日の舞美ちゃんはなっきぃにどんな大きいバッグを背負わせるのかな?
どんだけ豪快にぶん投げるのかな?

と、SSAでも楽しみにしていたのですが、、、

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(スカパー!生中継より。画質悪くてすいません)

 

舞美ちゃん、まさかの挙動。
「気付けば背に背負うバッグも重くて」の部分で彼女は、重い荷物を背負う代わりに、℃-ute4人全員をその長い腕で包み込んでいました。
もちろん彼女がそうしたことに深い意味はありません。純粋にメンバーみんなを抱きしめたくなったのでしょう。
それでも私はあのタイミングで、何十回とやってきたエアかばんの振りではなく何故かみんなの背中に両手を伸ばした彼女に感動を覚えずにはいられませんでした。

リーダーとして背負ってきた大きな重圧と、それら全てに抱く彼女の大きな愛情。
その二つが彼女の中で少しも矛盾せずひたむきに同居していたことが分かる一幕でした。
ちなみに「気付けば背に背負うバッグも重くて」のあとはこう続きます。

大切な約束と
想いが詰まっているから
下ろすなんて考えれずにここまで

歌いながら、矢島ちゃんを中心にして小指を絡めあう5人でした。 

 

、、、とここまで矢島ちゃんヲタ全開節の号泣節で書いてきましたが、
SSAの「アイアンハート」といえばもうひとつ特筆しなければならないことがあります。

曲中の最大の見どころ、「世界に一枚のフォトグラフ♪」の部分で撮影された写真が・・・・
なんと言えばいいものか分かりませんが、
簡単に言えば、うん、
残念でしたね。。笑

 f:id:chove-chovo:20170619164338j:image

(スカパー!生中継より)

 

この写真は終演後のスクリーンに大きく映し出されました。
終演時の会場中からは涙と感動に交じり、ところどころ失笑が。
「さすが舞美ちゃん」
「これぞ℃-ute」
後述する鳥肌もののラストの演出をやわらげてくれる、一服の清涼剤となってくれました。

完璧じゃないからこそ色褪せない(アイアンハート)

彼女の長くてしなやかな体躯から繰り出される一挙一投足が、なぜか℃-uteのすべてを総括して体現しているように感じられてしまう。

℃-uteにおける矢島舞美という人間の奥深さを十二分に堪能できた
、という意味でも素晴らしいSSAでした。

 

 

結局矢島ヲタ節全開になりつつあるので、気を取り直して4人について書きます。

 

「デートが始まるわ」
-中島早貴がこれから始まる

中島早貴ちゃん。常に皆とは一歩引いて、自分の意志すらも横に置き、この場でどう動けば最良なのかを常に考えてきた実質的サブリーダー。

バランスを取ることにかけて他の追随を許さない女、中島。

グラビア撮影があればみんながジャンプするタイミングを見はからってから一人少しずらしてジャンプし絵面のバランスを人知れず取る女、中島。

みんなの℃-uteの女房役として、また中間管理職として、彼女がいなければ℃-uteはどうなっていたでしょう?

そんな彼女がラストコンサートで自分の為に選んだ曲が「私立共学」でした。
おそらくSSAで歌われた全36曲の中で最も一般的な馴染みの薄い曲といえるでしょう。
普段から「お客さんが何をしたら喜ぶか」を考えている中島早貴ちゃんとしては異色にも思える選曲です。しかし、だからこそ、解散発表してから時間をかけてやっと「女優業をがんばりたい」と口にすることが出来たことと、この選曲はとてもリンクするのです。

今まで自分を滅して℃-ute第一で考えてきた彼女が初めて見せてくれた
自分の本当にやりたいことと、歌いたい歌。

「私立共学」は初デートを迎えた女の子が待ち合わせ場所に着くまでひたすらドキドキする心境を丁寧に描いた曲です。曲の最後は待ち合わせに到着した彼を見つけ
「デートが始まるわ」と締めくくります。

この歌のように、なっきぃにとってはこれからが中島早貴の人生としての本番なのかもしれません。私は彼女の主演舞台「1974」のDVDをこれまで10回以上観直してるくらい彼女の演技が好きです。心から応援しています。

「生まれてきてありがとう」
-エースでいてくれてありがとう、鈴木愛理

 梅田えりか卒業後第一弾シングルであった「SHOCK!」。そのリリースの際にメンバー間でいろいろあったことはこれまで沢山語られています。そんな℃-uteにとっていわくつきの曲を、あえて最後にオリジナルの歌割(つまりほぼ愛理ちゃんのソロ歌唱)で歌うことによって、すべてが昇華されたように感じました。
私も「SHOCK!」初披露となったよみうりランドイベントに当時いたのですが、コールをしていたらその時の思い出がSSAでよみがえりました。

「一年ちーかく つづいた♪」アイリー!
「こんなのはじめて だから♪」アイリー!
「とーつーぜんだったから♪」アイリー!(あれ、まだ愛理ちゃんパート続く・・?)
「信じていたから♪」アイリー!(まあ、次のパートから矢島ちゃんかな)

「もうすぐ記念日 なんだし♪」アイリー!(えっ・・)
「すっごく楽しみだった♪」アイリー!(まさか・・)
「なーいーしょの計画も♪」アイリー!(どこまでいくの・・?)
「全部台無しね♪」アイリー!(わたし愛理コールし過ぎじゃない・・?)

「ずるいよ二股SHOCK SHOCK♪」(ってか二股かよぉ~!!)
「元からなんでしょSHOCK♪」(元からかよぉ~!!)


いやはや、混乱を極める初聴き体験でしたね。。。
久しぶりに愛理コールを乱発して懐かしかったです。

「SHOCK!」の売れ行き次第では鈴木愛理ワンボーカル体制で続けようと画策していた事務所。
それに対し「5人で歌えないなら辞める」と初めて事務所に反対の異を示した愛理ちゃん。
次にリリースされた「キャンパスライフ~生まれてきてよかった~」は全員ボーカル体制に無事回帰されました。爽やかな曲調も相まって、その後に続く「Danceでバコーン!」「kiss me愛してる」「世界一HAPPYな女の子」など℃-uteのキラーチューン連発期に至るまでのターニングポイントと言える楽曲です。
そんな「キャンパスライフ」はSSAでも歌われました。
落ちサビで、愛理ちゃんはアドリブで叫びます。

「生まれてきて~♪ ありがとーっ!!」

 愛理ちゃんの「ありがとーっ!」を聴いて、私はまた昔のことを思い出しました。
それは「SHOCK!」初披露のほんの少し前、梅田えりかちゃんの卒業公演での、最後のMCの愛理ちゃん。

「今の気持ちを、漢字一文字で表します。・・体で。
えりかちゃーん、(大の字になって)大好きーーっ!!」

この頃℃-uteのMCはまだ台本通りで、予定調和な進行でした。
他のメンバーが梅さん卒業に触れずお仕着せのMCを続ける中、愛理ちゃんによって突然叫ばれた「えりかちゃん大好き!」は、メンバーに動揺を与えていたように見えました。

今思えば「SHOCK!のように5人で歌えないのなら辞める」という発言以前に、既にこの時愛理ちゃんは事務所の意図を破ってでも自分の強い感情を発露していたのです。

愛理ちゃんがそうして心の叫びを歌ったり叫んだりしてくれた結果、岡井ちゃんがパワーボーカリストとして覚醒し、℃-uteは歌唱力の高いアイドルグループと認められる存在になりました。個人的には、この期間に愛理ちゃん自身の歌唱力も大きく進化したように感じています。
望まずしてエースであり続けることに対する葛藤と闘ってきた彼女ですが、最後に「℃-uteが大好き」「アイドルになってよかった」と思ってくれたことがとても嬉しかったです。

「生まれてきてありがとう」、それはファンが愛理ちゃんに向けて叫びたい一番の言葉だったのではないでしょうか。

 

「勇ましい 輝きの方へ」
-岡井千聖の輝きなくして成立しえなかった今の℃-ute

愛理ちゃんが望まずしてエースの役割を担わされる一方で、いつまでもセンターになれない葛藤に長く悩まされていたのが岡井ちゃんでした。
アイドルとしての岡井ちゃんにとって最初の転機はYouTube。
まだ開設されたばかりの℃-uteの公式YouTubeチャンネルで、半ば実験的にアップされた「踊ってみた(本人)」動画がスマッシュヒット。
テレビ露出の少ない℃-uteがネットを通じて初めて名前を広めるきっかけとなりました。

(ちなみに、このヒットの舞台となった℃-uteチャンネルは、解散の2日後、最後となる動画をアップしてくれました。

踊ってみた動画をはじめとして、「君は自転車 私は電車で帰宅」での30パターンMV配信や、アバンギャルドな企画「萩原舞ですが、、、何か?」など、いろんな独自動画で楽しませて頂き、本当にありがとうございました!)


℃-uteチャンネルをご覧の皆さんへ

 

持ち前のオープンなキャラクターを存分に発揮することによって、初めて℃-uteメンバーとしてのアイデンティティを獲得した岡井ちゃんでしたが、彼女の本当の覚醒はその先に待っていました。(早くからセンターで歌っていた同い年の愛理ちゃんやBerryz工房菅谷梨沙子ちゃんと比べると、意外に大器晩成タイプなんですよね岡井ちゃんは・・(^^))

グループ存続すらも危ぶまれる危機的状況を抜け、℃-uteの内外での人気が高まりコンサートのチケットもソールドアウトが続いた2013年、とうとう初の武道館公演が決定。
武道館公演発表後、気運高まる℃-uteに与えられた最初のシングルが「アダムとイブのジレンマ」。岡井ちゃん初のセンターとなるシングル曲です。

デビューから7年経ってようやく手に入れたセンターでしたが、岡井ちゃんはこの曲で「自分はセンターじゃないから輝ける人間なんだ」と気付いたそうです。

ずっと℃-uteのセンターを張ってきた愛理ちゃんを心から認めることが出来、℃-uteの絆が深まる結果となりました。

そして勢いはとどまることを知らず、やがて岡井&鈴木をツートップボーカルに組み、ハイレベルなハモり歌唱と激しいバックダンスの幸せな融合を果たした℃-uteの看板的楽曲、「悲しきヘヴン」の誕生に至ります。

言ってみれば、℃-uteの最大の試練であった鈴木愛理ワントップ曲「SHOCK!」のショックを超えて℃-uteの辿り着いた境地とはすなわち、鈴木・岡井ツートップの「悲しきヘヴン」だったわけです。

℃-uteが進化するには岡井ちゃんの進化が不可欠であり、言い換えれば、岡井ちゃんの進化は常にイコール℃-uteの進化でありました。

なんだか岡井ちゃんの歴史解説みたいになってしまいましたが、
そんな岡井ちゃんの一番岡井ちゃんらしい曲は何か?と考えると、初期に歌われた「僕らの輝き」なのかなあ・・とSSAで思いました。

勇ましい 輝きの方へ
美しい 輝きの方へ

この曲は元々、岡井ちゃんメイン曲というよりは、岡井千聖・梅田えりか・有原栞菜の3人の為の曲でした。

歌唱力はあるもののセンター未経験だった3人が初めてメインを取った曲ということで、岡井ちゃん以外の2名も好きな曲に「僕らの輝き」を在籍時挙げていました。
後に2人が℃-uteを抜けることで自動的に「僕らの輝き」は岡井ちゃんソロメイン曲となりましたが、

この曲にはまだ鈴木愛理&矢島舞美センター固定だった時代の、

℃-uteのあるべき姿がまだ誰にも見えなかった時代の、

一筋の「輝き」が感じられます。
「希望」や「ポテンシャル」と言い換えてもいいかもしれません。

私もその「輝き」を感じられなければおそらく℃-uteヲタクにならずに終わっていたでしょう。

SSAで「僕らの輝き」が歌われた時、つい泣きそうになって、一瞬後ろを向いてこらえ直す岡井ちゃんがいました。
MCでも「ここからが長かった」と言っていましたが、本当に長かった。でも本当に「輝き」を捨てないでくれてよかったと思いました。これからも爆発したらすごい、「輝き」を常に秘めた岡井千聖を楽しみにしています。

 

「もうちょっと もうちょっと 最後まで」
-萩原舞ちゃんの刹那

そして萩原舞ちゃん。
5月27日、℃-ute最後のバスツアーの前日、5人が同時刻にブログを更新し、それぞれの解散後の進路が発表されました。
その内容を受けて各メディアは「萩原舞、芸能界引退」と報道。

℃-ute萩原舞、解散後に芸能界引退へ「違う道で頑張ってみたい」 | ORICON NEWS

しかし、私はこの報道を「曲解した誤報」だと受け止めていました。

今後について 萩原舞|℃-uteオフィシャルブログ Powered by Ameba

 ブログの中に「解散後、芸能活動ではなく違う道で頑張ってみたい」という文面は出てきますが、一言も「引退」とは書かれていません。
過去のハロプロメンバーでも卒業後海外留学して芸能界復帰している人は沢山いるので、メディアもファンも引退と決め付けないで欲しい、と思っていました。

その後ファンクラブツアーやイベントなどで舞ちゃんやメンバーの生の言葉を数多く聞きましたが、私の見聞きした限りにおいては誰ひとりとして「引退」という言葉を出していませんでした。だから私は内心こう思っていました。「今は舞ちゃんが自由でいられるように何も言わないけど、いつかは復帰する気持ちがどこかにあるはずなんだ」と。

だから、舞ちゃんがSSAの最後のMCではっきりと、聞かなかった振りすらもできない形で、「私は芸能界を引退してしまうんですけど」と言った時、泣いてしまいました。あんなに幸せな空気に包まれたライブだったのに、悲しくて泣いてしまいました。

鈴木愛理の歌に、岡井千聖のバラエティセンス。中島早貴のダンスとバランス感覚に、それら全てを包み込む矢島舞美の美しさと人間力。
揃いも揃って自信のない℃-uteの面々ではありますが、なんだかんだで「自分は℃-uteとしてこの武器で戦っていくんだ」という、よりどころとなる何かしらをみんな持っていたように思います。
舞ちゃんにとってのそれは何だったのか?
解散発表の際,℃-uteは「℃-uteは最後の日まで進化を続けていきます」と言っていましたが、この半年を見てきて本当にとどまるところを知らなかった進化は、舞ちゃんの愛らしさだと私は感じました。

歌い終わりにいたずらっぽく一瞬だけ見せる笑顔や,初めて見る泣き顔、メンバーを信頼しきってる姿など、可愛いってこういうことかと思いました。と同時に,なんて抽象的で、雲をつかむようにふわふわとした才能なんだ、と思いました。

それゆえに、4人の“分かりやすい”才能に気おくれしてしまう面があったのは想像に難くありませんが、でも、最終的に℃-uteを「パフォーマンス集団」ではなく「アイドル」に仕立てあげてくれたのは舞ちゃんの可愛さの才能だったのではないかと思うのです。

舞ちゃんをもっと見たかった。
そして私は、舞ちゃん自身からの引退の言葉を聞いてもなお、またいつかどこかで舞ちゃんを見られるという希望を捨てられずにいます。

 

「私はやっぱ「歌ってる私」が好き」

SSA全体の感想に戻ります。
「ファイナルスコール」で本編が終わり、アンコールで出てきた℃-uteは純白のウエディングドレスを着ていました。
そして歌われたのが「Singing~あの頃のように~」。

つんく♂氏が℃-uteのために書いたこの曲には何とも言えない違和感があります。
今までハロプロに1000曲以上の楽曲を書いてきたつんく♂氏ですが、そのほとんどは女子の細やかな心情が描かれており、歌詞に主体としての男性性を出してきたことはまずありませんでした。自分を出さずあくまで女の子のファンタジーに徹する。つんく♂楽曲がハロプロファンに愛されるゆえんです。

ところが「Singing~あの頃のように~」は様相が違います。

途中で投げ出したんじゃないって信じてる
今となって断言できることは
「よく頑張った」っていうこと

 この歌詞において、表面的には女言葉で体裁を整えているものの、歌の視点は℃-uteではなく完全につんく♂本人です。
解散が決まって℃-uteのために曲を書くとなった時つんく♂氏の中に湧いた、父親にも似た複雑な心境がこの歌からはうかがえます。特別な歌にしてあげたい、という気負いがつんく♂の本来の作家性をはみ出てしまったがゆえの幸せな違和感なのだと私は解釈しています。

そしてそんな曲を、最後にウエディングドレスを着て歌う℃-uteを見て、つんく♂氏に去来したものは何だったでしょうか?

ダブルアンコールの最後の曲は℃-uteの定番曲「JUMP」
、、と思わせて、アカペラでワンコーラスだけ歌う「たどり着いた女戦士」でした。
℃-uteの最大の夢だったとも言える初武道館公演のためにつんく♂が書き下ろした曲です。

、、、、と思わせて!
本当の本当に最後に流れた曲はなんと、「全部終わった帰り道」でした。

℃-uteは2017年に入ってから「解散までに持ち曲は全部歌う」と公言してきました。
事前に「歌わ(え)ない」と告知していた梅田えりかちゃんのソロ曲「ドドンガドン音頭」という例外を除いてそれは見事実行されました。が、最後の最後で、歌われるはずだったのに歌われないまま終わった曲が1曲だけ出てきたのです。

「全部終わった帰り道」。本当にラストに発表されたつんく♂作詞作曲の℃-ute楽曲です。重いタイトルとは裏腹に、拍子抜けするほど軽くて明るい女の子の歌です。まるで「Singing~あの頃のように~」「To Tomorrow」と、ガチすぎる℃-uteラブソングを作ってしまった恥ずかしさをつんく♂氏が慌てて埋めたかのような、あっけらかんとした曲調です。

「全部終わった帰り道」は元々歌われる予定にあったと思われます。ファンクラブバスツアーでメンバーのプライベート動画を観る機会があったのですが、その中に岡井ちゃんや愛理ちゃんが「全部終わった帰り道」の振り入れをしている映像があったので。

どの時点で、どんな理由で、一度も歌わないまま解散するという結論になったのかは全く分かりません。
が、往生際が悪くて妄想癖が強くて℃-uteが好きすぎる私にとって、「全部終わった帰り道」が歌われなかったという事実は、つい、とてつもない希望のように思ってしまうのです。

「全部終わっ」てない。

ダブルアンコールも終わり、メンバーがはけたあと唐突にスクリーンに表示された時計にはびっくりさせられました。
9時10分(キュート)に時を止めるという、最後にして最大のサプライズ。
あの、いつでもどこでもぐだぐだだった℃-uteが。
「SSA当日は寂しすぎて、終演するにできなくて大変なことになるかもしれない・・」なんて弱音を吐いていた℃-uteが。
MCの長さも全て計算して去り際を秒単位で決めていたなんて!

衝撃と感動でふらふらとSSAの会場をあとにしながら私が考えたことは、とても都合のいいことでした。

雨が降らなかった。
(13日に日付が変わるころ降り出して、本当に雨を調節できるようになったかと思った)
最後の「一枚だけのフォトグラフ」に舞ちゃんが写れなかった。
「全部終わった帰り道」は歌われなかった。
そして「9:10」の時計は止まったままだった。

「Singing~あの頃のように~」は終わりを告げる歌ですが、最後は

私はやっぱ「歌ってる私」が好き
私の為歌ってるあの頃のように・・・・

という、夢と現実の狭間のような歌詞で締めくくられます。

時は止まらずにはいられない。
あの大きく映し出された「9:10」の時計が何かの拍子で
「やっぱ」と動き出す時が来るんじゃないか?

今はそういうことを思っちゃいけない。
5人がそれぞれ自由に自分の人生を謳歌してほしい。
そんな罪悪感に似た感情を抱きつつも、今はそう思わないとやりきれないのもまた事実なのでした。

 

蛇足ですが最後に。
この記事は℃-uteとして最後となる矢島舞美ちゃんのブログがなんと原稿用紙約25枚分におよんだということに敬意を表し、同じ字数で書きました。
(顔文字や記号などのカウント方法により字数にぶれが生じるのですが、ここではアメブロの限界である1万字に最も近い9833字説に合わさせて頂きます。)

 

矢島舞美ちゃんの長文ブログと共に歩んできたと言っても過言ではない℃-uteの歴史ですが、いまこうして同じ分量で書いてみて思うことは、どんなに文字数を使っても℃-uteの良さは表現しきれないということです。

今まで、ありがとう。

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